遥かなる わがヨークシャー (Farawy My Yorkshire)

ヨークシャー・デイルズ (The Yorkshire Dales)

42 クレイ付近 [ウォーフデイル] (Near Cray, Wharfedale)

 ウォーフデイルの最上流にある集落の一つに、クレイがある。ここまで来ると、風景もいちだんと寂しく、寒々としてくる。そして、「だいぶデイルの奥までやってきたなあ」という感慨がしてくる。
 集落の名前になっている「クレイ(Cray)」という言葉は、古代のケルト語で「新鮮で清らか」という意味があるという。デイルの奥地を吹きぬける、冷たくも澄みきった大気を表現したものだろう。
 ヨークシャーの奥地には、アングロ・サクソン人が来る前にブリテン島に住んでいたケルト人がつけた地名も残っているのである。
 ここから南に12kmくらいのところに、ヨークシャーの三大名峰「ザ・スリー・ピークス」の一つに数えられる丘のような山ペニゲント(Pen-y-Ghent、標高約694m)がある。この山の名前も、ケルト語から来ているとされている。
 この水彩画は、クレイ付近から、南のウォーフデイルの下流のほうを望んだ眺めである。ペニゲントは、画面の外、右のほうにある。
 画面の反対側には、かつての猟場ラングストゥロスデイル・チェイスがある。そこからのウォーフデイルの眺めを描いた水彩画を、この本の裏表紙(このウェッブサイトでは次に)のせた。
 ラングストゥロスデイル・チェイスにつづく急な峠道キズストーン・パスを越えてゆくと、北にあるウェンズリーデイルの支流の一つであるビショップデイルに出る。


ラングストゥロスデイル・チェイスからの眺め
(The view from Langstrothdale Chase)

When I came to Cray, one of the villages of the uppermost Wharfedale, the landscapes became deserted and lonesome. I could not but feel that I came to the depths of the Yorkshire Dales. I also felt the cold but fresh and clean air blowing over the dales and hills. So did the ancient people, the Celts. That is way, they named here Cray which meant " fresh and clean " in their words, I suppose. In the depths of the dales, Celtic-names often remain.


*スリー・ピークス、ザ (ThreePeaks, the)  ヨークシャー北西部の高地にある、三つの丘のような山のこと。ヨークシャー最高峰のウェアンサイド(Whernside 標高約736m)、第2位のイングルバラ(Ingleborough 標高約724m)、第6位のペニゲント(Pen-y-Ghent 標高約694m)からなる。


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